皆様は、私が14年前に「シックハウス症候群」と命名し、さまざまな研究や、啓蒙、ネットワーク化を行う中で、産官学にも賛同者が増え2003年に室内化学物質規制が行われたことはご存じだと思います。また、温度差の問題が如何に重要な問題かに関しても前回、前々回でお知らせしました。
今後、さまざまな団体企業の協力を得て、温度差の激しい低断熱の家から温度差の少ない高断熱の家と移られた方、人体への影響調査を全国数千件規模で行う準備をしています。 そんな矢先、経営破たんで有名な夕張医療センターで病院の窓を2重の樹脂サッシに変えたことで、暖房費が大量に節約し、入院患者さんに良い結果が出たという報告があり、夕張に行ってまいりました。 |
大阪府保険医協同組合 理事 NPOシックハウスを考える会 理事長 上原 裕之 |
夕張医療センターの事業自体は黒字ですが、もともと炭鉱でお湯が使い放題だったため病院の断熱が弱く、1ヶ月で暖房代が五百万円もかかり、このことで経営危機に陥っていました。
そんな中、地元のサッシメーカーの協力で、大幅に暖房費を減らす取り組みをおこないました。夕張医療センター長の村上智彦医師は、「健康な人間には我慢できる多少の暑さ、寒さも24時間センターで暮らす入院患者さんには快適な場所で療養してもらいたいという気持ちが強かった」と語ります。また、「高齢者がトイレや風呂で倒れない、人にやさしい建物づくりには窓の断熱がカギになると思います。医療関係のデータからもそれを立証し、法制化につなげたい。人も地球も元気にする。これが私のロマンです」と熱く語っておられました。
実際に窓を樹脂サッシと高断熱複層ガラスのコンビネーションにすることで夕張医療センターでは暖房のための重油費を年間500万円削減することに成功し、光熱費が39%削減できました。しかも、これはCO2の排出量を年間160トン削減したことにもなります。
夕張医療センターの成功例は窓の「高断熱」がいかにコストコンシャスかということを示していますが、同時にシックハウス対策にもなることを示しています。窓を閉め切ってエアコンに依存するライフスタイルの定着がカビやダニなどの発生を促し、また外気温との極端な温度差が健康に及ぼす影響は大きなモノがあります。その点でも窓を閉めていても快適な室温を保ちカビや雑菌の繁殖しない環境をつくることが重要です。「高断熱窓」はその解決策の一つだと思います。
施工前 | 施工後 | |
単板、アルミサッシ(非断熱タイプ)一層の引きちがい窓 | 新しい窓は室内のあたたかさをガッチリ保ちます |
特に高齢者や体が弱い方が多く集まる医療機関でこのような取り組みをすることは、コスト的なメリットも含め大きな意味があると思います。
先生方の住宅、診療所、病院においてもきっと役に立つ話だと考え、今年の協同組合まつりに夕張医療センターで実務の責任者として村上院長を支える佐藤事務局長にお越しいただき、夕張医療センターの状況を報告していただきます。また、同時に、樹脂の2重サッシが如何に断熱性能を有するかに関する実験や過去の研究データ、窓を入れ替えることが困難な場合1日で内窓をつける方法や費用等に関して「樹脂サッシ普及促進委員会」の協力で展示及び説明の場を用意させていただきます。
家族、従業員で高血圧、血管心臓に問題のある方、病院の冷暖房費削減をお考えの方、一線の技術者が会場で説明をしていただけますので、是非ご参加ください。 最後に夕張医療センターでは、暖房費の大幅削減に成功したものの、まだ半数以上の窓が単層ガラスの為、さまざまな企業や、大学、学者の皆さんと一緒に改修の為の募金をしております。協同組合としましても、保団連の募金の協力の要請を行いました。 |
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